- 施術コラム一覧 - 鍼灸による身体の変化・仕組み・効果③ストレスへの作用:なぜストレスが身体に良くないのか
「鍼の後はイライラとか怒りとかどうでもよくなる」とか
「先生の治療後は、はぁ~っと心の底から楽に息ができる」などと、
治療後、身体の回復だけでなく、精神的な面の感想を言ってくださる患者さんがいます。
あまり知られていないいませんが、鍼灸には間違いなく、精神面にも効果があります。
簡単に言うと
☆「ホルモンバランスの調整」です。
①攻撃性や怒りを減らして、
穏やかに、安らかにいられるホルモンを出します。
②心身にかかるストレスから自分を守るスイッチ(ホルモン)をオンにします。
鍼灸がストレスや不安、過敏症など精神面になぜ効果があるかご説明します。
まず、皮膚・筋肉には多くの感覚(「冷たい」「温かい」「痛い」「かゆい」など)の情報を感じる神経があります。
その神経が皮膚で情報を受け取り、脊髄(背骨の中)を通り、脳へ伝えられ、それらの感覚(「冷たい」「痛い」など)を認識します。
鍼によるツボ刺激=皮膚・筋肉への微小な損傷も同じように、脊髄(背骨の中)を通り、脳へ伝えられます。
鍼灸の効果ということでは、
「延髄」
「中脳」
「視床下部」
という、3つの場所に届けられます。
※正確には、下肢に鍼刺激を与えた際に、刺激が脊髄後角、脊髄視床路、視床、大脳の知覚中枢へと投射されること、
それに付随して視床下部や中脳水道周囲灰白室、延髄弧束核へも投射されることが示されています。
今回はストレスなど精神面への作用ということで鍼をした際に「視床下部」に起こる変化について書いていきます。
主な効果は2つです。
①オキシトシン産生細胞の増加
→脳の不安を減らし、安らぎ、幸せ、癒しという感情と結びつくシステムをつなぐ!精神安定!!
②CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)産生細胞の減少
→過剰なコルチゾール分泌によって常に「飢餓状態の戦闘態勢」なった精神・身体状況を正常化する!
⇒ホルモン調整をして、イライラ緊張を軽減し、落ち着き、穏やかになる。
下で詳しい説明をしていきます。
まずは、オキシトシン産生細胞が増加されるとなぜよいか?
詳しく説明していきます。
当然ですが、「オキシトシン」が多く産生されます。
「オキシトシン」は、幸せホルモン、信頼ホルモン、絆ホルモン、思いやりホルモン、癒しホルモンとも呼ばれているホルモンで、
大きい細胞でできたオキシトシンは、血中に放出され作用し、
小さい細胞でできたオキシトシンは、軸索(神経)を通って、脳の様々な場所へ神経伝達物質として作用します。
オキシトシンの効果
【身体面】
・痛みの閾値が上がる(痛みを感じにくくなる)
・傷の治癒が早くなる(細胞分裂しやすい)
・ストレスホルモンの血中濃度の低下(CRHの過剰分泌を抑える)
・筋肉の緊張が減る
・心拍数と血圧の低下
・胃腸がより効率的に働く
【精神面】
・学習能力の向上
・好奇心が強くなる
・恐怖にかられず、落ち着く(不安軽減)
・精神的な安らぎを与えるといわれる「セロトニン」作動ニューロンの働きを促進
☆☆更にセロトニンの効果もあり、
ストレス反応を抑え、身体の緊張も緩和し、
安らぎ・幸福感をもたらし、人と交わったりする社会的行動への不安を減少させます!
オキシトシンは
→精神安定効果抜群!!
セロトニンとは、脳内で情報をやり取りする時に使われる「神経伝達物質」の一つです。
50種類以上存在する神経伝達物質の中でも特に重要な役割を果たすものの一つで、ノルアドレナリン、ドーパミンと並んで「三大神経伝達物質」とも呼ばれています。
ノルアドレナリンは怒りや興奮などの感情を司り、ドーパミンは意欲や好奇心などの感情を司りますが、これらの暴走を抑えて、心のバランスを保ち精神を安定させる役割を担っているのがセロトニンです。
セロトニンも「幸せホルモン」と呼ばれており、セロトニンが不足すると、精神の安定が保てず、うつ病や不眠症になると言われています。
オキシトシンも、前頭前野、海馬、偏桃体などに働きかけ、
うつ病に関わりの深い海馬の神経細胞の新生を促進することによって、
うつ病を改善する可能性があることも明らかになりつつあります。
次は、
②CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)産生細胞の減少についてです。
わかりにいので言い換えると、
「ストレスに対抗するホルモンの過剰分泌を抑える。」
↓
「コルチゾールの過剰分泌を抑える」
コルチゾールとはストレスを感じると副腎皮質から分泌されるホルモンです。
【コルチゾールの効果】
●一時的に血糖、血圧を高め、ストレスに耐え、生きられるように!=一時的にストレスと戦うために必要なエネルギーを蓄える!
・脳のエネルギー源を増やすため、糖の合成促進をする
・細動脈のアドレナリンの反応性の亢進(末梢血管収縮、血圧上昇、強心作用、血糖上昇)
・飢餓状態になれば糖新生(体内の糖質以外からグルコース・糖を作る)を起こす
・タンパク質異化促進(タンパク質を糖化して、血糖量を上昇)
・交感神経を刺激(脈拍の亢進、心筋収縮など)
・抗炎症作用(血管収縮、血管の透過性の抑制)
しかし、ストレスを受け続け、分泌量が増えすぎると、
当然、糖尿病や高血圧になります。
また、交感神経優位になりすぎますと、副交感神経優位で働く体の内をパトロールするリンパ組織が委縮します、
さらに、抗炎症作用が続くと、血流が悪くなり、細胞に栄養を運ぶ赤血球、細胞修理の白血球の働きを抑えます。
→免疫力・回復力が抑制されます。
さらに記憶をつかさどる海馬も委縮することも分かっています。
☆☆コルチゾールの分泌のし過ぎはめちゃくちゃ身体に悪い!!
→ストレスは身体にめちゃくちゃ悪い!!
なぜストレスに対抗するためのホルモンなのにこんな悪循環なのか?
それは、人類の長い歴史のほとんどは、「飢餓や外敵との戦い」で、生命の危機にさらされていたからです。
副腎皮質ホルモンコルチゾールは「食べ物が食べられない状況下で外敵と戦う、日々をしのぐ」ために、うまく立ち回れるように作用するのがもっとも重要な作用でした。
飽食の世の中になる時代までは、非常に理に適った命を守るためのシステムだったのです。
それもあり、私たちの体の仕組みは、血糖値を下げるより「上げよう」とする働きが多く、強力です。
具体的には、血糖値を上げるホルモンは、コルチゾールの他、いくつもある一方、
血糖値を下げるホルモンはインスリンのみです。
体の仕組みは私たちの社会変化には、追いついていないということです。
☆☆過剰なコルチゾールは生活習慣病だけでなく、
交感神経優位になり、免疫力を低下させ、不眠や不妊症など様々な病気、症状、痛みの引き金になります。
これがストレスが身体に悪いと言われる理由です。
何かあれば「原因はストレスです」とTVやお医者さんに言われることが多く、ストレスは比較的軽い言葉、仕方ない言葉、誰にでもある言葉で我慢するのが当たり前と受け流されてしまいがちですが、
ストレスは体の内から血管をギューッと握りつぶし(強い血管収縮、透過性の抑制)、細胞を破壊し、身体を蝕みます。
※細胞を破壊するという表現は自律神経の顆粒球のページを作れたら説明いたします。
ストレスによる体の不調、原因のわからない不調を感じたら、
なかなか難しいことですが、病気になる前に生活を見直すことを強くお勧めします。
再度まとめ
ストレスなど精神面へなぜ鍼灸の効果があるか?
鍼刺激が脳「視床下部」に働きかけ、
①オキシトシン産生細胞の増加
→脳の不安を減らし、安らぎ、幸せ、癒しという感情と結びつくシステムをつなぐ!精神安定!!
②CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)産生細胞の減少
→過剰なコルチゾール分泌によって常に「飢餓状態の戦闘態勢」なった精神・身体状況を正常化する!
⇒ホルモン調整をして、イライラ緊張を軽減し、落ち着き、穏やかになる。
「ホルモンバランスの調整」
①攻撃性や怒りを減らして、
穏やかに、安らかにいられるホルモンを出します。
②心身にかかるストレスから自分を守るスイッチ(ホルモン)をオンにします。
人によってはストレス・精神面への鍼灸治療後「浄化された~」と表現される方もいるくらいです^^
特に頭への鍼は精神面、ストレスに対してとても大きな効果があります。
説明不足や言葉足らずな場所もありますが、今後補足の記事やリンクを作っていきます。
また、鍼灸師の方や医療関係者のアドバイス、訂正、疑問などありましたらコメントやメッセージお待ちしております。
多くの方の力もお借りして、より深い正しい知識にしていけたらと思っております。